世界情勢の改善に取り組む国際機関、世界経済フォーラム(WEF)は「グローバルリスク報告書」を毎年発表しており、2018年度版では、発生の可能性が高く、負のインパクトが大きいリスクとして、「異常気象」、「自然災害」、「気候変動の緩和や適応への失敗」などが上位に挙がったと報告しました。
アイカグループでは、これらのリスクの重要性を認識し、持続可能な社会を実現すべく、ISO14001を基に環境マネジメントシステムを構築し、地球温暖化防止(気候変動問題へのアクション)、環境負荷の低減(資源と汚染の問題へのアクション)に積極的に取り組んでいます。
事業へのリスク認識
気温の上昇や水不足など、世界的な気候変動?異常気象?自然災害に対する懸念が増大している中で、アイカグループの業績に大きな影響を及ぼす可能性がある事柄として、特に下記の2点を想定しています。
環境規制リスク‥気候変動対策や化学物質使用?環境保全面での規制強化に伴う影響
大規模災害リスク‥BCP(事業継続計画)を作成し毎年対策を講じ訓練を行っているが、予想を超える事態が発生した場合の影響
環境指数の中長期目標
対象範囲:国内全生産拠点
目標項目 | 目標値※ | 削減対策 | 方針 | |
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気候 変動 |
温室効果ガス 排出量の削減 |
売上高原単位 前年度比 3% 削減 (2030年度までに 2013年度比 26%削減) |
?中長期削減計画に基づく削減対策の実施。 ?エネルギー使用の見える化による 生産工程における無駄の排除 ?適切な省エネルギー投資 |
こちらを ご覧下さい |
エネルギー投入量の削減 | こちらを ご覧下さい |
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汚染 (化学物質管理) |
PRTR法対象物質の 排出?異動量削減 |
絶対量 前年度比 1% 削減 (2020年度まで) |
?歩留まり向上 ?排出抑制 ?代替物質への仕様変更 |
こちらを ご覧下さい |
廃棄物 | 産業廃棄物の削減 | 売上高原単位 前年度比 2% 削減 (2020年度まで) |
?中長期削減計画に基づく削減対策の実施。 ?工程内不良削減 ?適切な環境投資 |
こちらを ご覧下さい |
※M&A等による新規連結に供なう増加分を除く。
環境指数(マテリアルバランス)の推移2018年度 環境会計
2018年度の主な取り組みなど詳細はCSRレポートをご覧ください。
地球温暖化防止(気候変動問題へのアクション)
温室効果ガスの排出削減(省エネルギー)
地球環境保護における重点課題は、地球温暖化防止です。2015年12月、第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、地球規模の新たな法的枠組みとなる「パリ協定」が採択されました。その後、2017年6月にアメリカが脱退を表明しましたが、2017年11月ドイツでCOP23が開催され、パリ協定の実施指針交渉が継続されています。日本においても2017年3月「長期低炭素ビジョン」が取りまとめられ、地球温暖化対策への取り組みが推進されています。日本の削減目標は、2030年までに2013年比26%削減、2050年までに80%削減です。アイカグループにおいても、温室効果ガス削減を積極的に進めており、2030年度まで毎年度、売上高原単位排出量を前年度比3%削減することを目標に掲げています。
一方、世界規模で増加している異常気象を原因とした災害によって、当社も近年幾度か被害を受け、気候変動は大きな事業リスクであると痛感しています。より適切な対応をしていくことが喫緊の課題であると認識し、温室効果ガス削減を積極的に進めています。
アイカグループ国内全生産拠点で「温室効果ガス?産業廃棄物削減の中長期計画」を策定し、①エネルギーの見える化による改善活動(不良削減?無駄の排除)、②適切な環境投資、③エネルギー使用?排出における管理の高度化、を通じて、目標達成に向けた取り組みを行っています。
【スコープ3】
日本国内の省エネ法などでは、企業自身が排出した温室効果ガス(GHG)排出量に当たるスコ-プ1(化石燃料?天然ガスなど)と、間接的に排出したGHG排出量に当たるスコ-プ2(電力など)の管理が義務付けられていますが、近年カーボン?ディスクロージャー?プロジェクト(CDP)をはじめ、サプライヤー(取引先企業)のGHG排出量をスコープ3(製造、輸送、出張、通勤など)として管理し、対外的に開示する動きが強まってきています。
当社では、2006年から製品の製造に掛かるCO?排出量の把握、算定に取り組んでおり、上記の流れに沿って、スコープ3の算定を行いました。その結果、インパクトの大きいプロセスは製品ごとに異なり、原材料の調達プロセスでCO?排出量比率が高くなる製品は化成品のブレンド製造品で、製造プロセスでCO?排出量が大きい製品は多くの工程を要する高圧化粧板、と大まかに捉えることができました。
ただし算定に用いたデータは古いものが多く、新たに加わったグループ会社の商品についても算定を進める必要があり2019年度に更新する計画です。
<スコープ3のカテゴリーごとの適用と算定値>(t-CO?)
カテゴリー | 算定値 | |
---|---|---|
1 | 購入した物品、サービス | 659,200 |
2 | 資本財 | 4,100 |
3 | 燃料およびエネルギー関連活動 | 20,300 |
4 | 輸送?流通(上流) | カテゴリー1に含む |
5 | 事業から発生する廃棄物 | 4,200 |
6 | 出張 | 1,200 |
7 | 従業員の通勤 | |
8 | リース資産(上流) | 適用外 |
9 | 輸送?流通(下流) | 13,400 |
10 | 販売した製品の加工 | 適用外 |
11 | 販売した製品の使用 | 適用外 |
12 | 販売した製品の廃棄 | カテゴリー1に含む |
13 | リース資産(下流) | 適用外 |
14 | フランチャイズ | 適用外 |
15 | 投資 | 適用外 |
(2013年算出)
気候変動イニシアティブへの参加
CDPジャパン、公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)、公益財団法人 自然エネルギー財団の3団体が事務局を務める、気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)に参加いたしました。
脱炭素社会の実現に向け、積極的に取り組みます。
詳細は気候変動イニシアティブホームページをご覧ください
エネルギー使用の効率化に関する方針
燃料資源の大部分を輸入に依存せざるを得ない状況下にある日本においては、近年の国民経済の発展に伴う生産、流通及び消費の拡大、国民のライフスタイルの変化等を背景に、エネルギーの使用量は高い水準で増加しています。国際的なエネルギー需給が逼迫するおそれは、恒常的に存在します。また、主としてエネルギーの使用に起因する温室効果ガスの排出等による地球温暖化は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがある重大な問題となっています。このような認識の下で、エネルギー使用の削減?効率化を推進していきます。
環境負荷の低減(資源と汚染の問題へのアクション)
アイカグループでは、環境負荷の低減と資源の有効利用を目的に、化学物質の管理、産業廃棄物の削減?リサイクル、水資源の有効利用に取り組んでいます。生産性の向上や、製品の軽量化を検討し、また環境負荷物質を代替物質へ置き換える仕様変更を進めています。
化学物質の管理
当社では、揮発性有機化合物(VOC)を含む有害な化学物質の排出?移動量の削減を化学メーカーとしての重要な責務と認識しています。PRTR法で対象となった物質に関して2002年度以降削減に取り組み、10年後の2012年にはほぼ1/5にまで削減しました。
資源の有効利用
アイカグループは、資源を有効に活用し、循環型社会の実現に貢献するよう努めています。製品設計においては、原材料使用の効率化よる省資源化や、包装?梱包材の軽量化に取り組んでいます。また、生産工程においては、発生した廃棄物の再資源化を進めるのはもちろん、不良削減による廃棄物の削減に取り組んでいます。
産業廃棄物の削減
1998年から産業廃棄物の削減に向けた具体的な取り組みを開始し、グループ全体の重要な環境指針としています。現在は自社で産業廃棄物を減容化し処理する仕組みや、加工を加えて有価物処理できないかを検討しています。
<外部企業との協働によるリサイクル>
項目 | 協働者 | 内容 | 取り組み範囲 |
---|---|---|---|
減容化 | 機械メーカー | 廃樹脂、脱水処理汚泥の減容化 | グローバル |
原材料として活用 | 肥料メーカー | 肥料用途開拓 | 日本 |
原材料として活用 | バイオプラスチックメーカー | 微粒子と再生PPとの混合で製品製造 | 日本 |
水使用量の削減
国内生産拠点では工業用水?地下水を使用しており、名古屋工場、甚目寺工場では水の循環使用を進めています。水使用量が最も多い伊勢崎工場は、豊かな利根川水系に立地し潤沢に水資源を使用していますが、今後は使用量を削減するよう取り組みます。
海外生産拠点においては、水事情に深刻な国もあり、各国事業所がそれぞれの必要な対応をとって有限な資源であることを認識して使用管理していきます。世界資源研究所(WRI)が公表しているAQUEDUCTを参考に、ハイリスクエリアを特定し、優先的に水の有効利用を推進しています。
インド北西部に位置するアイカ?ラミネーツ?インディア社では、製造工程で水の循環利用を行っており、また廃水は工場内の設備で処理しガーデニング用途に活用しています。
<ハイリスクエリアにおける2018年度水使用量の実績>
拠点名 | 対象地域 | 使用量 |
---|---|---|
アイカ?ラミネーツ?インディア社 | インド北西部 | 37,000m3 |
アイカインドネシア社 | インドネシア | 129,000m3 |
アイカインドリア社(AAPHグループ※) | インドネシア | 30,000m3 |
アイカシンガポール社(AAPHグループ※) | シンガポール | 90,000m3 |
瀋陽愛克浩博化工有限公司 | 中国東北部 | 3,700m3 |
※AAPHグループ···アイカ?アジア?パシフィック?ホールディンググループ
LCAの活用
当社では商品を開発するにあたり、ライフサイクルアセスメント(LCA)を導入?活用しています。
当社主力商品であるメラミン化粧板は、人工大理石や塩ビ鋼板と比べてCO?排出量が少なく、環境に優しい商品です。また当社建装材関連商品は耐久性が高く、ライフサイクルが長い点からも環境に優しい商品といえます。
なお、会社事業の中でどの分野で一番多くのCO?を排出しているかの評価に、製品のLCAを活用しています。
<ライフサイクルアセスメント(LCA)の概念図>
<アイカ製品のLCA評価結果>
- 注)2012年実施内容
- 注)当時把握し得た製品の製造までのデータを使用し、(社)産業環境管理協会のJEMAI-LCA proソフトにより当社にて算出しました。